りんごの蜜は時間が経つと消える?貯蔵中に起こっていること
サンふじを切ったとき、果肉の中に透き通った蜜がたっぷり入っていると、
「おいしそう!」
と思いますよね。
大湯ファームでも、収穫したばかりのサンふじを切ると、蜜がたっぷり入っていることがあります。
ところが、同じサンふじでも年が明けてから切ってみると、
「あれ?蜜が少なくなっている」
ということがあります。
実際に大湯ファームでは、収穫直後にはたっぷり見えていた蜜が、
年明け頃からだんだん少なくなっていくのを感じます。
では、りんごの蜜はどこへ行ってしまうのでしょうか???
そして、蜜がなくなったりんごは、甘くなくなってしまうのでしょうか???
今回は、実際にサンふじを収穫し、冬から春まで貯蔵・販売しているりんご農家の立場からお話しします。
そもそも「りんごの蜜」って何?
りんごを切ったとき、芯の周りが半透明になっていることがあります。
これが一般に「蜜入り」と呼ばれている状態です。
「蜜」という名前なので、砂糖やハチミツのような甘い液体が
果肉の中にたまっていると思われることがありますが、そういうものではありません。
りんごの葉で作られた養分は、主に「ソルビトール」という形で果実へ運ばれます。
成熟が進んだりんごでは、このソルビトールなどを含む液体が
細胞と細胞の間にたまり、水浸状に見えることがあります。
それが、私たちが「蜜」と呼んでいるものです。
サンふじは蜜が入りやすい品種として知られていますが、
すべてのサンふじに同じように蜜が入るわけではありません。
ここは農家として、ぜひ知っていただきたいところです。
収穫直後は蜜たっぷり。でも年明けから変わってきます
大湯ファームのサンふじは、収穫したばかりの時期には蜜がたっぷり見えるものがあります。
私たちもりんごを切って、
「今年は蜜が入っているな」
と感じることがあります。
ところが普通冷蔵で貯蔵しながら販売していると、年明け頃から少しずつ蜜が見えにくくなってきます。
これは珍しいことではありません。
収穫した後も、りんごは生きています。
呼吸をしながら少しずつ変化を続けていて、貯蔵中には蜜の部分に多く含まれる
ソルビトールなども果肉の中で代謝されていきます。
そのため、収穫したときにははっきり見えていた蜜が、
時間が経つにつれて少なくなったり、見えなくなったりすることがあります。
私たちも以前は、お客様に分かりやすく「蜜はだんだん果肉に吸収されていきます」と説明することがありました。
イメージとしては近いのですが、実際には、りんごが貯蔵中も生きていて、
果実の中で成分が少しずつ変化していると考えていただく方がよいと思います。
蜜が消えたら、甘くなくなるの?
ここが一番お伝えしたいところです。
見える蜜がなくなったからといって、それだけで「おいしくないりんご」になるわけではありません。
「蜜=甘さそのもの」と思われがちですが、蜜が見えるかどうかだけで、りんご全体の甘さやおいしさが決まるわけではありません。
実際、大湯ファームでも年明け以降、蜜が少なくなってきたサンふじを食べますが、
「蜜がなくなったから、急に味がなくなった」
というものではありません。
もちろん、りんごは生ものです。
長く貯蔵すれば食感や酸味などは少しずつ変化します。
ですが、「蜜が見えない=甘くない」「蜜がない=おいしくない」ではありません。
これは、ぜひ覚えていただけたらと思います。
「前に買ったりんごには蜜が入っていたのに」
実際にお客様から、
「前に買ったときは蜜が入っていたのに、今回は入っていなかった」
と言われることがあります。
蜜を楽しみにして購入されるお気持ちは、私たちにもよく分かります。
切った瞬間に蜜がたっぷり入っていたら、やっぱり嬉しいものです。
一方で、私たち農家にも一つひとつのりんごに、
どのくらい蜜が入るのかを完全にコントロールすることはできません。
同じ畑、同じ品種、同じように育てたりんごでも、蜜の入り方には違いがあります。
その年の天候や成熟具合、収穫時期などによっても変わります。
外から見て、
「このりんごには必ず蜜が入っています」
と一玉ずつ確認することもできません💦
「必ず蜜入りでお願いします」と言われることもあります
以前、
「ほかの農家さんから買ったら全然蜜が入っていなかったので、今回は必ず蜜入りでお願いします」
とご希望をいただいたこともあります。
お気持ちはよく分かります。
ただ、農家としては「必ず蜜が入っています」とお約束することはできません。
りんごを切って中を確認してからお届けするわけにもいきませんし、
何より蜜の入り方は自然がつくるものだからです。
私たちは一年間、できるだけ良いりんごになるよう手をかけて育てています。
それでも、すべての実を同じ蜜入りにすることはできません。
ですから、蜜が入っていなかったという理由だけで
「品質が悪い」「おいしくない」と判断されてしまうと
、農家としては少し残念に感じます。
蜜は、りんごのおいしさを楽しむ一つの要素。
蜜だけが、おいしいりんごの証ではありません。
そう思っていただけたら嬉しいです。
大湯ファームでは時期によって貯蔵方法も変わります
大湯ファームでは、サンふじを時期によって貯蔵方法を変えながら販売しています。
収穫後のサンふじは普通冷蔵で貯蔵し、だいたい1月いっぱいまで販売します。
Sサイズのサンふじは、2月頃まで普通冷蔵で販売します。
そして3月頃からは、長期貯蔵したロングライフサンふじへ切り替えていきます。
こちらはスマートフレッシュを利用し、CA冷蔵で貯蔵したサンふじです。
りんごは収穫した瞬間から少しずつ変化していきます。
その変化をできるだけゆっくりにしながら、
春までおいしく食べてもらうために貯蔵技術を活用しています。
※スマートフレッシュについては、別の記事で詳しくご紹介します。
収穫直後と春のりんごは、同じではありません
りんご農家として毎年見ていると、収穫したばかりの11月のサンふじと、
貯蔵して春に食べるサンふじは、まったく同じ状態ではありません。
収穫後もりんごは呼吸を続け、少しずつ変化しています。
蜜も、その変化のひとつです。
だから私たちは、春のりんごを見て、
「蜜がないからダメ」
とは考えていません。
収穫直後には収穫直後のおいしさがあり、きちんと貯蔵したりんごには、
その時期ならではのおいしさがあります。
長くりんごを楽しんでいただくために、私たち農家も貯蔵方法を工夫しています。
蜜だけで、りんごを判断しないでほしい
蜜がたっぷり入ったサンふじは、切ったときの見た目もきれいです。
「蜜入りりんごが食べたい」
というお客様がいらっしゃることも、よく分かります。
でも、蜜は自然の中で生まれるものです。
同じ年、同じ畑、同じ品種でも、一玉一玉違います。
そして、収穫したときに入っていた蜜も、
貯蔵している間に少しずつ見えなくなっていきます。
蜜がないから、おいしくないわけではありません。
ぜひ蜜だけではなく、甘さ、酸味、香り、食感など、
りんごそのもののおいしさを楽しんでいただけたらと思います。
私たちも毎年一年に一度しかできないりんごづくりの中で、
経験を積み重ねながら、よりおいしいりんごをお届けできるよう勉強していきます。





























