同じ木のりんごでも甘さが違うのはなぜ?りんご農家が解説
「同じ木から採れたりんごなら、全部同じくらい甘いんじゃないの?」
そう思われる方も多いかもしれません。
ところが、実際にりんごを育てていると、**同じ1本の木になったりんごでも、甘さや色づき、食味には違いが出ます。**
同じ品種、同じ畑、さらに同じ木なのに、なぜ味が違うのでしょうか。
今回は青森県弘前市でりんごを栽培している大湯ファームが、畑で実際にりんごを育てている農家の目線からお話しします。
同じ木でもりんごの甘さは同じではありません
りんごの木には、たくさんの実がなります。
一見すると同じように育っているように見えますが、実際には一つひとつのりんごを取り巻く環境が違います。
大きく関係するのが、
* 太陽の光
* 葉の状態
* 実がなっている場所
* 枝の状態
* 実の数
* 収穫までの成熟具合
などです。
そのため、同じ木から収穫したりんごでも、糖度や酸味、色づきなどに違いが生まれます。
## 理由① 太陽の光の当たり方が違う
大きな理由のひとつが**日当たり**です。
りんごの木をよく見ると、外側にある実もあれば、枝や葉に囲まれた内側の実もあります。
当然、すべてのりんごにまったく同じように太陽が当たるわけではありません。
りんごの葉は太陽の光を受けて光合成を行い、作られた養分が果実の成長にも使われます。
そのため農家は、ただ実を大きくするだけではなく、**木全体にできるだけ光が入るように枝を整えること**も大切にしています。
## 理由② りんごの周りにある葉も一つひとつ違う
りんごを甘くするうえで、とても大切なのが「葉」です。
葉が光合成をして作った養分が、りんごの果実へ送られます。
しかし、すべての実の周りに同じ枚数、同じ状態の葉があるわけではありません。
日当たりの良い元気な葉が多い場所もあれば、日陰になりやすい場所もあります。
また、病気や虫、強風、暑さなどによって葉の状態が変わることもあります。
私たちが畑で見ているのは「りんごの実」だけではありません。
**良いりんごを育てるためには、収穫まで葉をできるだけ健全に保つことも大切な仕事です。**
## 理由③ 木のどこになっているかでも違う
1本のりんごの木でも、
「木の上の方」
「下の方」
「外側」
「木の内側」
など、実がなっている場所はさまざまです。
場所によって日照条件や枝の勢いなどが異なるため、りんごの育ち方にも差が生まれます。
実際に収穫していると、
「ここの枝のりんごはいいな」
と思うことがあります。
同じ木だから全部同じではなく、**一本の木の中にも、りんごが育ちやすい場所がある**ということです。
## 理由④ りんごを実らせすぎてもいけません
りんごの木にたくさん実がなれば、農家にとって良いことのように思えるかもしれません。
でも、単純に「多ければ多いほど良い」というものではありません。
一本の木が作れる養分には限りがあります。
実をたくさん残しすぎれば、それだけ多くの果実へ養分を分けることになります。
そこで行うのが「摘果(てきか)」です。
まだ実が小さい時期に、育てるりんごを選んで、それ以外の実を落としていきます。
せっかく実った小さなりんごを落としてしまうので、初めて見る方には「もったいない」と感じられる作業かもしれません。
でも、**残したりんごをしっかり育てるために欠かせない作業**なのです。
## 理由⑤ 同じ日に収穫しても成熟度に差があります
同じ木になっているりんごでも、すべてがまったく同じタイミングで成熟するとは限りません。
色づきや熟し具合を見ながら収穫しますが、一つひとつの果実には個体差があります。
また、りんごは「甘さ」だけで味が決まるものでもありません。
糖度が高くても酸味がしっかりしていれば爽やかに感じますし、酸味が抜けてくると甘さを強く感じることもあります。
**糖度だけでは表せない「甘味と酸味のバランス」も、りんごのおいしさの一つです。**
## だから農家は一本一本の木を見ています
りんご栽培のおもしろいところでもあり、難しいところでもあるのが、
**「同じように育てても、全部が同じりんごにはならない」**
ということです。
同じ畑でも違う。
同じ品種でも違う。
そして今回お話ししたように、同じ一本の木になったりんごでも違います。
だから私たちは、剪定や摘果などの作業をしながら、一本一本の木の状態を見ています。
「この枝は少し混んでいるな」
「ここはもう少し光を入れたいな」
「今年は実が多いな」
そんなことを考えながら作業を繰り返し、秋の収穫まで育てていきます。
## りんごの個体差も農産物のおもしろさ
スーパーなどできれいに並んでいるりんごを見ると、工業製品のように一つひとつ同じものに見えるかもしれません。
でも、りんごは自然の中で育つ農産物です。
同じ木から採れたものでも、大きさや形、色、甘味、酸味などに少しずつ個性があります。
私たち農家は、その違いをできるだけ小さくし、おいしいりんごを皆さんに届けられるよう一年を通して手をかけています。
それでも、一つとしてまったく同じりんごはありません。
箱を開けたとき、
「このりんごは甘い」
「こっちは少し酸味があっておいしい」
そんな違いを感じたら、それも自然の中で育ったりんごならではの個性として楽しんでいただけたらうれしいです。
## まとめ
同じ木になったりんごでも甘さが違うのは、主に**日当たりや葉の状態、実がなっている場所、実の数、成熟度などが一つひとつ違うため**です。
一本の木の中でさえ環境は均一ではありません。
だからこそ、剪定をしたり、摘果をしたり、葉を健全に保ったりしながら、できるだけ一つひとつのりんごがおいしく育つ環境を整えていきます。
毎年同じ畑でりんごを作っていても、天候も木の状態も同じ年はありません。
そこがりんごづくりの難しいところであり、私たちが長年りんごを育てていても飽きない、おもしろさの一つなのかもしれません。





























